初床屋

引っ越して一番困るもの。馴染の食べ物屋から離れちゃうのもつらいが、い ちばんつらいのは馴染の床屋から離れること。大倉山にあった床屋は若手理容師 養成所みたいな床屋でおやじさん一人に若手5〜6人でやってる店だった。若手は 半年くらいで出家していっているようでどんどん入れ換わっていた。その床屋は なんとカット1800円+髭そり100円の1900円というおちーぷ価格でなおかつ、一発 で短く切って微調整も必要以上にやらないから20分くらいで全部終わるというス ピーディな店でらぶらぶだった。

引っ越して最初の床屋。どの店に入るかって、結構勝負。どきどき。早速 一軒見付けた。「カット1900円ヨリ」
おおお、と思ったが、駐車場がなかった。しかしここは安い。今日は別の店にし て次回チャリで来よう。駐車場のある店を探す。あった。どれを見ても店の外に 値段が書いてない…。こわい。しかも、女性店員しかおらん。ここ、ほんとに理 容店だよなあ…と迷いつつ入口に立って値段表を探す。

「こちらへどうぞ」

あららら、引き寄せられるように座ってしもた。負けた。値段表値段表… 目の前に紙がある。

「ほげほげコース5800円」

なにやらカット以外に色々入ってたが単語が分からん。でもカットだけなら 5800円以下だよなあ。さっき財布の中を確認したら15000円くらいだったからと りあえず食い逃げはしなくて済むだろう…

背中がぷりぷり動く。なんだこれ。うおー、椅子がマッサージ機になってい て脊椎のあたりをビー玉みたいなので軽く叩いてマッサージしとる。ぎゃー、や めてー。とおもうが恐くていえない。

…………

会計。「3800円になります」
ふう、意外に普通だった。「コーヒーでも召し上がって行きませんか?」
「い、いらないっす」
んー、最初に入る店は恐い。逃げるように店を出た。


きまぐれ記
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